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​森の補助線

本作では、ボロノイ図法とよばれる、​携帯電話のアンテナを立てる計画をするにあたり、どの位置にアンテナを立てればすべての場所で効率的か、という検証をする為の幾何学を使いました。今回は、このアンテナを樹木とみたて、すべての住空間が最も親密になるように部屋の配置や形状を決めて行きました。

​森の秩序

「森に住む」、これは最初に敷地を訪れた時、全身の中に入ってきた感触でした。建築がさほど主張することをしない、でも、「森そのものに住んでいるような感覚」、これを実現するためには、ただ「森がよく見える」だけでは充分ではありません。それなりの工夫が必要なのです。

例えば、森の樹木たちは、「互いに太陽光を遮らない」という秩序の下、その立つ位置を決めています。その互いの秩序が、この森の顔付きを決定しているのです。本当の意味で「森に住む」感覚とは、こうした秩序に従うことから生まれます。

今回は、この森に「生えている・生えていた」樹木の配置を尊重することから、建築物の空間を決定してみました。そうして誕生してきた住空間こそ、森の記憶を引き継ぎ、正に「森に住む」ということを「表面」でなく「根」の部分から実現させることになるのです。

週末住宅としての心地よさ

「1/fのゆらぎ」とは、周波数が高くなるにつれ反比例して信号レベルが小さくなる波形のことで、「信号レベルー周波数」を両対数グラフすると、ゆっくり明滅しながら時折パパッとまたたくようなイメージです。

建築の仕上げの顔付き、構成部材を1/fのゆらぎで計画する「均質でない素材感」を用いることで、週末の時間に目に見えない力を与えてくれることになります。

特に「内壁」が一番、住まう人の記憶の源泉となります。本当の意味で人がどのように壁というものの素材と対話するのか。結局はその物との対話の記憶が、その人の感性や豊かな毎日を作り上げてくれることになります。

工業用品として均質で整っているのではなく、自然の風合いふぞろい感こそが、本当の意味で、住まいの空間に味わいを出し、人を作って行ってくれるです。

また、「森に住む」には、壁の仕上げはできる限りダーク系の色で存在感を無くすことが必要だと考えました。

​前田紀貞アトリエ:http://maeda-atelier.com/

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