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超己

“生きようとすること”の真髄とは、いつも今ここの
己を否定し続けることである。昨日の己が否定され、
今日の己になり、今日の己が否定され、明日の己にな
る。これを「超己」という。
己が己になるには己を否定すること。東洋思想は時と
して、同じ文字に反対の意味を含めるレトリックを使
うので、これをよりわかりやすく書き直せば次のよう
になる。すなわち、「自分が“本当の己”(自己)にな
るには、その周りに付着した“泥まみれの己”(自我)
を取り除く(否定する)こと」と。これが己による己
の否定であり超己の所以だ。
この絶対否定、即、絶対肯定の中にこそ、真の意味で
の己(自己)が見えてくる。これこそが本当のところ
の「無私」の意味だ。「無私」の「私」とは、“ 自己”
でなく“自我”を示す。だから「無我」ともいう。

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