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癌を経験したことのない癌専門医
酒の飲めないバーテンダー
訴えられたことのない弁護士
僕は時としてこういう人たちのことを
不思議に思うことがある
建築家も
肉親の死や若き日の挫折
鈴虫の鳴き声や水の味に感じ入ることなく
日々やり過ごしているようでは
それらと何ら変わりない
僕達が提案する建築の風景は、
その空間性や住まう手触りを
微に入り細に入り
自身で体験しようとしてみることで
追体験可能だ
そうやって手にすることのできた世界の
歓喜や苦悩への共感は
いつか全一的で体系的な建築を提案する際に
不可欠であったこと
このことは後になってからわかる
建築家にはまずは
「生きることの達人」
になるよう求められるのだ
生きることの達人
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